苦しい表情のメルディが頭の中にちらつく・・・。 いつからかわからないが、 僕の頭の中ではいつも彼女の表情は笑顔ばかりだった。 なのに・・・あの笑顔が今は・・・・。 [君の為に...] 「キール、どこまで行くんだ?全然薬草らしきものなんて生えてねーぞ」 「この巣の中で外界の光が当たるところに生えているはずだ」 洞窟内に微量な日の光が差し込んでいるためか、たいまつは不要だった。 ・・・・にしてもキールのやつ体力ついてきたなぁ。 以前は少し走っただけでも嘆いていたのに・・・変わったもんだ。 その変わりようはメルディのおかげでもあるようだが・・・。 などと、考えながら進んでいくうちに、明るくなってくる方へと近づく。 「あれだ!」 そこの窟内は穴のあいた天井から差し込む太陽の光に照らされていた。 隅にある緑色の細い植物から新芽だけを摘む。 「さ、メルディのところへ戻ろう」 「待て・・・」 「どうしたリッド・・・?」 「静かにしろ・・・――――どうやらご主人様のお帰りらしいぜ」 響く窟内で、確実に大きくなってくる魔物の足音。 その音から察するに・・・・1匹。 「強行突破だ!」 「お、おい、キール!?」 メルディが待っているんだ! こんなところで、時間を潰したくない!! ・・・あの苦しい顔から開放しなければ!! いつになく柄でない事を想い、キールは走り出した。 そんな彼を微笑ましく思いながら、 またその反対に自分がしっかりしなくてはと思うリッドが続いた。 今のキールはリッドからしてみれば第2のファラ同然。 「リッド、少しの時間稼いでくれ!」 「了〜解!」 お互い何をすればいいのかくらいわかっていた。 リッドが盾になり、キールが晶霊術で対抗する。 こちらへと向かってくる魔物相手に、リッドはこっちだと挑発に踊り出る。 「―――我が糧となり、我と共に一対になりて その力を具象せよ!」 詠唱を終えたキールの声が、リッドを呼ぶ。 それに呼応し、盾で相手をどつき横に逸れた。 「ロックブレイク!!」 「ばっばかっ!!?」 地響きとともに落岩が生じる晶霊術。 こんな狭い窟内で、それも逃げ道は一方通行で・・・。 「キール!何してんだ早く逃げるぞ!!」 気が動転していたとしてもやってはいけないことだ。 早くメルディのところへ戻ってやりたいという気持ちはわかるが、 これでは助かる命も助からず、さらに自滅してしまいかねない。 キールらしかぬ行動に、リッドは肝を潰されながらも、巣穴から脱出する。 「おい、大丈夫か?」 「あ ああ・・・すまない」 埋まりはしなかったが、中で詰ったのは確かだ。 中に取り残された魔物は大丈夫だろうか? ・・・などと考えながら、 落ち着かないキールを連れてファラ達のもとへと戻っていった。 「リッド!キール!!」 ファラは遠くから駆けて来る2人を見つけて、早く早くと手を振り迎える。 リッドの後方から300m近く離れて頑張って駆けて来るキール。 やっぱり遅いな・・・。 「はぁはぁ・・・はぁ・・・これを・・・水に浸して・・・はぁ・・・」 「水に浸すんだね!」 キールから薬草を受け取ると碗に水を注ぎ入れ、突っ込んだ。 自然と色が透明な蜂蜜色へと変わっていく。 「色が変わったよ キール!」 「・・・それにパナシーアボトルが必要だ」 「――――おい、ないぞ」 「そんな・・・」 リッドの腰袋を逆さまにしても出てこない。 っと、打つ手はないかと焦り始めたとき。 「2人で買って来てくれ、まだ時間ならある。 飛空挺を使って近くの町で買って来てくれ!」 「わかった!」 「メルディお願いね!」 ここからは海辺に近い。 海辺にはチャットが待機していた。 ・・・これで邪魔者はいなくなった・・・・。 『クィ?』 「クィッキー・・・・」 クィっと首を傾げてキールを見上げるクィッキーは可愛いが、 今のキールからしてみれば邪魔者の他でもない。 本当はパナシーアボトルなど必要ない。 ただ、キールはメルディと2人になるきっかけを作りたかったのだ。 だからあえて、必要だと、買って来てほしいと追い出した。 なのに、クィッキーがいたのでは・・・・。 「・・・ん・・・キール?」 「目が覚めたのか?」 先ほどまで、ぐったりとして寝ていたメルディは起き上がろうとする。 「駄目だ!ちゃんと横になっていなきゃ! まだ解毒剤飲んでいないだろう!!」 「大丈夫よぅ・・・メルディこれくらい平気ぃ」 抑える体が熱い・・・体全体発熱している! 「メルディ、これを飲んで寝るんだ!」 「それ・・お薬か・・・?」 「そうだ、解毒薬だ、これ飲んだら寝るんだぞ。いいな?」 「はいな・・・」 少しだけ起してやり、足でメルディの背を支えてやる。 解毒薬を飲むその震えている手を支えてやりながら、 抱え込むようにしてぼそりと罵声をメルディに呟いた。 「・・・後先考えずに突っ込むからだ」 こくりと喉を鳴らして飲み干したメルディはにっこりとキールに笑顔を向けた。 その笑顔が「ありがとな」といっているような気がした。 「ごめんな・・・メルディ皆に心配かけた」 荒い呼吸のまま吐く言葉はとても優しい声だった。 いつもよりずっと暖かくて優しい声。 「ありがとな・・・・」 「メルディ・・・・・メルディ・・・?」 キールの胸で急に黙り込んで、動かなくなったメルディ。 だが、しだいに落ち着いてきた呼吸音が聞えてきて、キールを安心させた。 「ったく・・・まぁ、いいだろう」 ≪この魔物の栽培する薬草には昔からのジンクスが残っており、 愛情が強ければ強いほど効き目が出てくるといわれる――――≫ 「・・・メルディ」 そっと目を閉じて、その静かに閉じている瞼に口付ける。 ≪――――が最高のジンクス。・・・まだ読むか?メルディもう眠いよぅ・・・≫ ふと抱き締めれば抱き締めるほど、体温が伝わる。 そして目を閉じれば君の笑顔がある・・・・。 |
悌
瑠磯様のHPの205hitのキリバン権をいただきまして
書いてもらったTOE・・・エターニアのキルメル小説!
きゃー、メルディのためにがんばるキール!
メルディを大切に思う気持ちが伝わってきてうふふふのふ(何
もー、キルメル大好きー!(>▽<)こういうあったか話も大好きですv
素敵キルメル小説、ありがとうございましたー!
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