後の事を顧みずに先走るから・・・! だから嫌だったんだ!! [君の為に...] 「メルディっ!」 前方ではリッドが、一番後ろではファラが魔物と対峙していた。 食事中を良いことに腹をすかせた魔物達がこぞって襲ってきたのだ。 囲まれたリッド達は、置いていた荷物を中心に迎撃しはじめた。 ほとんど援護を任されているメルディとキールは、晶霊術の詠唱を唱え始める。 リッドとファラが時間を稼いでくれている間に、一撃に近い攻撃を繰り出すために。 だが、あちらもそう馬鹿ではないらしい。 そこらへんに落ちている岩などを投げてきた。 その時だった。 サンダーブレードを唱えようと前へ走り出るメルディに覆う影。 「危ないっ!」 キールの飛び込みのおかげで、メルディは飛んでくる岩を避けられたが、 反対にキールの全体重が細いメルディの体に圧し掛かる。 「危ないじゃないか!何してるんだ!!」 起き上がったキールはメルディに一喝すると、すぐさま後方を見渡す。 敵の攻撃が来ないか確認していたのだ。 「キール、ごめんな・・・」 「全くだ!」 「でもな、前に行かないとサンダーブレード出来ないよぅ」 「他のものにすればいいだろう!」 「あの魔物にはサンダーブレードが1番効く!」 言っても切りが無い。 「いいから僕の後ろにいろっ!」 何で頭脳派の僕が不釣合いな肉弾戦などしなきゃならないんだ! 「――――ハっ!!」 近寄ってきた小さな魔物を打ち払う。 大型の魔物を相手に四苦八苦しているリッドとファラを援護しなくては! 「メルディ!」 「はいな!」 「僕が食い止めている間に詠唱を終わらせろ!」 「わかったよ!クィッキーも手伝ってほしい!!」 『クウィッキィィー!!』 サンダーブレードの詠唱は長い。 そのため、キールは詠唱時間の少ない晶霊術を放ちながら、 クィッキーと共にメルディを護衛する。 「裂空ぅ斬っ!―――――――狽オまった!」 リッドの必殺技をかわして、そのまま前進する大型の魔物。 その魔物の先にはメルディを護るようにキールが奮闘していた。 足が速い! 追いつかねぇ・・・!! 「キール!そっちに行ったぞ!!」 「何っ!?」 ふとリッドの方を振り向けば、2mはある巨体が迫って来ていた。 「キール!メルディが後立つよ!!」 「わかった!」 メルディとは逆にすれ違い、後退する。 避難するようにキールの肩にはクィッキーが飛び乗った。 次の瞬間――――――――――!! 「リッド、飛べっ!!」 「サンダーブレードっ!!!」 キールの叫び声が早かったのが幸いか、 メルディの繰り出す晶霊術に紙一重でかわすリッド。 感電・・・いや、黒い灰となって消えた魔物。 後方からは「大丈夫――――?」と、ファラが駆け寄ってきた。 なんとか戦闘に勝利をしたらしい―――――・・・が、 「メルディ!!」 近づいてくるファラを安堵の目で確認したあと、メルディの意識は歪んだ。 急に倒れてきたのを、地に直撃する前にリッドが受け止める。 荒い呼吸に額には汗がにじみ出ている。 突然の様態に困惑するファラ。 メルディの右袖が赤く滲み出した。 「毒だ!・・・さっき倒した魔物が毒を持っていたのか」 「平気だよぅ・・・」 「駄目だ!横になってろ!」 リッドからメルディを受け取り、木陰に横たわらせる。 クィッキーが心配そうにメルディの傍らについていた。 「私の解毒功でいま回復するからね!」 「無理だ・・・あの魔物の毒は特別だ」 「じゃあどうしたら毒を取り除けるの?」 焦りが生じる。 リッドも咄嗟に袋から解毒草を出したが、キールに駄目押しされた。 「急く事は無い。横になっていれば まだ安全だ。 あの魔物の特性は体内で毒である液状のものを作り出し、 今さっきのように・・・狩りなどに使用し、獲物を捕えて食すんだ。 つまり魔物自体が毒の根源であって、活動――――」 「長い解説はいいからメルディの毒を直すのが先でしょ!!」 「聞いてくれ!今、その話をするところなんだ!」 あまりに長い説明に痺れをきらしたファラ。 メルディの一大事によくも冷静でいられると、 キールに怒るが リッドにいいから聞けと制される。 「で、キール続きは?」 「ああ、あの魔物自体が毒で・・・」 「それは聞いた」 「今から本題に入るんだ!」 「へいへい」 キールが落ち着いていると言う事は、メルディの助かる道が少なからずあるということ。 セイファートの試練によって、相手を心から信頼することを学んだリッドは キールを信じる事にしたのだ。 だから、メルディは助かる。 安心して話を聞ける。 だが、なにかキールには気に障るようで、いつもの気の無い返事にむっとする。 「いいから、キール言って」 早く、毒を取り除いて上げたいと心配するファラに、 キールは気を取り直して説明を再開する。 「活動するものに対しての毒なんだ。 だから横になって安静にしていれば時間稼ぎできる」 「時間稼ぎ・・・っつーことは解毒剤探しか?」 「心当たりはある」 「私の解毒功じゃ駄目なの?」 「多分難しいだろう・・・」 「それじゃ私がメルディ看ているから、早めにね!!」 走り出すキールを追って、リッドは岩陰に近づいた。 「あの巣だ」 「なんでお前が知ってんだ?」 「セレスティアの魔物はどんなものなのか、 アイメンの図書館でメルディに教えてもらって調べた」 「お前すげぇよ・・・これでメルディが助かるんだからな」 回りに巣穴の主がいないか確認し、徐々に近づく。 リッドの歓声などお構いなしに、キールはさらに真剣な表情で言葉を突っ返した。 「その薬草を手に入れたとしても、直し方に難があるんだ!」 「どんなやり方なんだ?」 「いい今は、薬草を手に入れることが先だ/////」 緊張の解れない雰囲気にリッドの言葉も自然とそうなる。 だが、キールの頬に朱が走っているのを見て、リッドは一気に脱力感をあじわう。 「・・・少しわかった気がする」 そのまま、暗い巣穴に潜り込んだ2人は―――――――――― to next. |